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アンベードカル博士の教えが生きる街ナグプールにて(2025年 大改宗式 前編)

  • 執筆者の写真: Ryota Hatanaka
    Ryota Hatanaka
  • 10月11日
  • 読了時間: 5分

更新日:10月20日

インドでは毎年10月、大勢の人々が「新しい人生」を選びます。

それがナグプールの“大改宗式”。

インド留学プラスの現地スタッフであり、普段はずっと南インドのバンガロールに住んでいる私、畑中は今年も現地に足を運び、その現場をこの目で見てきました。


大改宗式当日の夜のディークシャーブーミ

大改宗式当日のディークシャーブーミ


今回のナグプール訪問は4回目。3回目は飛行機で行きましたが、今年は1、2回目と同じように列車利用でナグプールを目指しました。

普段はずっとインドにいることもあって、定刻より2時間遅れで列車がきても何もストレスを感じぬまま列車に乗り込みました。


ハイデラバード付近の駅で停車するインドの列車

実際に私がナグプールへの移動で乗車した列車


インドはなんだかんだと住み始めて3年目。こういった味わい深い移動方法にも慣れてきた今日この頃です。


9時間遅れの列車でナグプール到着


バンガロールを出発してから約30時間後、ようやくナグプールに到着。

列車は結局、定刻より9時間遅れで到着しました。


ナグプール駅の駅舎とヒンディー語の看板

ナグプール駅の駅舎。ライトアップが綺麗です


変なふうに捉えられるかもしれませんが、ナグプール駅のこの文字を見ると

「あぁ、インドに来たなあ」と毎回思ってしまいます。


普段住んでいる南インドのバンガロールでは、言語も文字もまったく異なり、同じ国の中でも別の世界のようです。(インドは州によって言語が異なります)

※私が住むバンガロールはカンナダ語、ナグプールはマラティ語です。



ナグプールの大改宗式とは何か


そもそも「大改宗式」とは何かを簡単にいいますと、

1956年にアンベードカル博士(インド憲法を作った人物)が、長年続いたヒンドゥー教のカースト差別からの解放を目指して、自ら仏教に改宗し、その場で約50万人もの人々が一斉にヒンドゥー教から仏教へと改宗した歴史的な出来事です。


場所はナグプール市内のディークシャーブーミ(Dikshabhoomi)。この地は今も、博士の思想と勇気を記念する特別な場所として、多くの人々が毎年10月に集まります。


改宗広場から見た夜のディークシャーブーミ

改宗広場から見た夜のディークシャーブーミ


「教育せよ、団結せよ、行動せよ(Educate, Agitate, Organize)」という博士の言葉に共感し、差別のない社会を目指して生きる人々にとって、この日は“新しい人生の出発点”とも言える日です。


もちろん、私もインドにずっと住んでいますので、この改宗式がどれほど多くの人々の人生に影響を与えてきたかを、日々の生活の中で感じます。

貧しさや身分の壁に阻まれながらも、教育を受け、職を得て、誇りを取り戻そうとする人たち。その姿を見るたびに、「アンベードカル博士の教えはいまも確かに生き続けている」と感じるのです。


そして、現在もアンベートカル博士の遺志を継承し、活動されている方こそ、バンテージこと、佐々井秀嶺上人です。佐々井秀嶺上人については、ナグプールを訪問するたびにお会いさせていただいており、過去の記事に詳しく書いております。


佐々井秀嶺上人に関しての過去記事(note記事)はこちらです。



インドラ寺の前でボランティアとしての参加


さて、ナグプール到着の翌日には、インドラ寺の事務局長であるアミットさんと合流しました。

インドラ寺は、佐々井秀嶺上人が住まわれている仏教寺院であり、この時期は多くの人々が参拝に訪れます。

大改宗式が行われるディークシャーブーミ(改宗広場)に向かう前に、まずここに立ち寄る人が多いのです。


昼食をいただいた後は、寺院の前で薬を配るボランティア作業に取り掛かりました。

もちろん、私は医者でもなければ薬剤師でもないので、一緒の机に座っている女性の医者の方から、

「あの薬取って、この薬を補充して」とヒンディー語で言われるので、それに従って動く感じです。


人々が薬を受け取る医療ボランティア活動

インドラ寺の前で薬を配る様子と並ぶ人々


そこで気づいたことがありました。

インドラ寺にやって来る多くの人々は、普段病院に行けず、薬を買うこともままならない人たちです。


人々は必死に医者に「ここが痛い」「熱がある」と訴え、医者は短いやり取りの中から症状を判断して薬を手渡します。

私にとってインドでは薬は非常に安価で、身体の不調を感じたらすぐにドラッグストアに行き、薬を購入する生活をしています。


しかし、そのような薬を“貴重なもの”として受け取る人々の姿を見て、

改めて医療格差の大きさを痛感しました。


机の上には市販薬が並ぶ

机の上には多くの市販薬が並んでいる


そして、医療従事とは一切無縁の私から見ても、足の腫れがひどく、背中も痛いと訴えるおじいさんに、他の人と同じ市販薬をひとつ渡すしかないという場面もありました。

そのとき、このような無償の支援の「限界」というものも感じました。


今回薬を受け取った彼らが次に薬を手にするのはいつだろうか。

今回受け取った薬はおそらく長くは持たない。

それでも少しでも体が楽になる時間があるなら、それだけでも意味があるのかもしれない。


そう思いながら、正直、複雑な気持ちになったのも事実です。



BEDCのブース設営に参加して


また別の活動として、大改宗式が実施される会場(ディークシャーブーミ)に設けられていた、

BEDC(Bhim Entrepreneurship Development Council) という団体のブース設営にも参加しました。


ナグプールのディークシャーブーミで行われたBEDCブース風景 現地スタッフとの写真	インドラ寺で活動する現地スタッフと筆者

BEDCのブースにてスタッフたちと


この団体は、アンベードカル博士の理念を受け継ぎ、

貧困層や若者のための教育支援・職業訓練・起業支援などを行うNGOです。

現地ではジョブフェアやスタートアップ支援、無料のスキルトレーニングなどを通じて、人々が自立して生活できるようにする活動を続けています。


ブースの設営を終えると、すぐにたくさんの人々が足を止め、次々とパンフレットを手に取っていきました。

机の前には、スタッフの説明を真剣に聞く人、資料を見る人。

その姿を見ていると、「こうした活動が、誰かの未来を少しでも変えるきっかけになるのかもしれない」と感じました。


ブースでの受付業務風景と人々

BEDCのブースには多くの人々が訪れた


ブースでの活動の中で、私は改めてアンベードカル博士の言葉である

「Educate, Agitate, Organize(教育せよ、奮起せよ、団結せよ)」

の意味を、ほんの少し理解できた気がしました。



続きは、 

に書いております。 ※この記事は、インド留学プラスのnoteで公開している記事、

ナグプールに行くたびに、インドの深さに触れる 2025年 大改宗式 (前編)




 
 
 
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