ナグプールで感じた信仰のかたちと人のつながり(2025年 大改宗式 後編)
- Ryota Hatanaka
- 2 日前
- 読了時間: 5分
※この記事は、前回の「アンベードカル博士の教えが生きる街ナグプールにて(2025年 大改宗式 前編)」の続きです。
前編では、ナグプールへ向かう長旅や、現地でのボランティア活動を通して感じたことについて書きました。
後編では、いよいよ大改宗式当日の様子と、そこで出会った人々のことを中心にお伝えします。

インドラ寺の横で食事をする仏教徒の方々
日本からの参加者たち、そして日本とのつながり
例年通り大改宗式には、インド人だけでなく、日本からの参加者も多く見られました。
なかでも印象的だったのは、南天会という団体が主催するツアーで日本から訪れていた方々です。
南天会は、佐々井秀嶺上人の活動を長年支援しており、ツアーを通じて得度(僧侶としての誓い)を受けるために、毎年多くの日本人がこの地を訪れます。
今回、私はその皆さんとゆっくりお話しする機会こそありませんでしたが、ディークシャーブーミの会場で法衣をまとい、真剣な面持ちで儀式に臨む姿を拝見しました。

ディークシャーブーミの会場で法衣をまとう方々
異国の地で、異なる文化の人々が同じ理念である「人間の尊厳を守る」という想いのもとに集う。それは、言葉の壁や国境を越えた “信仰のつながり” そのものであり、
この改宗式が世界的な広がりを持っていることを改めて実感しました。
また、今回の滞在中には、YouTubeチャンネル「JQ出家して世界を行く〜行き先はアナタが決める」で活動されている、高橋淨久さんにもお会いすることができました。

高橋淨久さん、アミットさんと
さらに、私と同じバンガロールに在住されており、起業家である、川本寛之さんともお会いしました。

バンガロール在住の川本寛之さんと
そして昨年もお会いした小野龍光さんや黒澤龍月さんとも再びご一緒できました(残念ながら今回は写真を撮れず、次の機会にぜひと思っています)。
同じ志を持つ日本人がこの地に集い、それぞれの立場で佐々井上人の活動を支え、博士の理想を広めようとしている姿を見て、言葉では言い表せない感動を覚えました。
ナグプールだけではない仏教の広がり
大改宗式当日。ディークシャーブーミの周辺では、各地から訪れた仏教団体がさまざまな催しを開いていました。
その中のひとつ、タミル・ナードゥ州(南インド)から来た仏教徒のグループの集まりにも参加させていただきました。
会場ではすべてタミル語で進行していたため、詳しい内容までは理解できませんでしたが、参加者の表情や雰囲気から、信仰の深さが伝わってきました。

タミル・ナードゥ州からの仏教徒グループ
インドの仏教には大きく分けて二つの流れがあります。
ひとつは、古くからヒマラヤ地方(ラダック州、アルナーチャル・プラデーシュ州など)で信仰されてきたチベット仏教系の伝統仏教。
もうひとつは、1956年にアンベードカル博士によって始められた、カースト制度からの脱却を主な目的とする現代インド仏教です。
基本的に、ナグプールの大改宗式で見られたのは、後者の現代インド仏教の人々です。
博士の教えに共鳴して仏教徒となった人々は、主にマハーラーシュトラ州(ここナグプールを含む)に多く暮らしていますが、私が住むバンガロールにも、そしてタミル・ナードゥ州にも確実にその輪が広がっています。
この光景を見て、現代インド仏教の仏教復興運動は単なる宗教運動ではなく、人々が尊厳を取り戻し、学び、共に生きるための“社会的な運動”でもあるのだと改めて感じました。
佐々井秀嶺上人の説法と、もうひとつの「仏教のかたち」
タミル・ナードゥ州の仏教徒の方々の集まりに出席した後に、メイン会場であるディークシャーブーミ(改宗広場)に向かいました。
改宗広場には、インド中から多くの僧侶や仏教徒、そしてアンベードカル博士の教えを慕う人々が訪れ、まるで人の波がどこまでも続くような光景が広がっていました。

改宗広場に集まった人々
メインイベントは、もちろん佐々井秀嶺上人による説法です。
上人は長年にわたってアンベードカル博士の教えを受け継ぎ、インド各地で仏教復興と社会改革の活動を続けてこられた日本人僧侶です。
博士亡き後、数えきれない人々が差別のない社会を目指して歩み続けられたのは、上人の力強い導きによるところが非常に大きいと感じます。

壇上での佐々井秀嶺上人
壇上に立った上人の声は、スピーカーを通して広場の隅々まで響き渡り、改宗広場にいる全ての人々がその言葉に耳を傾けていました。上人の語る声はとてもまっすぐで力のある声です。会場の空気がひとつになったような感覚を覚えました。
前編でも記載した通り、佐々井秀嶺上人については、ナグプールを訪問するたびにお会いさせていただいており、過去のnote記事に詳しく書いております。
佐々井秀嶺上人に関しての過去記事(note記事)はこちらです。
大改宗式が終わり、最後の日に感じたこと
大改宗式の翌日であるナグプール滞在の最終日、私は再びインドラ寺の前で食事配りの活動に加わりました。
笑顔を絶やさず、次々と食事を受け取っていく人々の姿を見ていると、「支援」という言葉よりもむしろ「分かち合う」という言葉の方がしっくりきます。

インドラ寺の前で食事配りをする様子
わずかな時間ではありましたが、少しでも人々の役に立てたのであれば、今回のナグプール訪問は私にとって100点満点です。また来年もこの場所に戻りたいと心の中で静かに思いながら、バンガロールへ長い列車の旅路へと戻りました。
おわりに
今回の訪問で感じたのは、「信仰」と「社会活動」がとても近い距離にあるということでした。ナグプールで出会った人々の笑顔、アンベードカル博士の思想、そしてそれを今も支え続ける多くの人たち。宗教という枠を超えて、人が人として生きる尊厳を守ろうとする力。それこそが、この大改宗式がいまも続く理由なのだと思います。
※この記事は、インド留学プラスのnoteで公開している記事、
「ナグプールで感じた、信仰がつなぐ力 2025年 大改宗式(後編)」
をもとに編集しています。note版はこちら ↓↓
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