
インドで英語留学するメリット — 本当に伸びるのは「世界の英語を聞き取る力」
「インド訛りがうつるのでは」— 毎週いただく質問です。訛りの実際から最大のメリットであるリスニング力まで、学術研究と公的統計をもとにお伝えします。
最終更新日: 2026-08-04
「インドで英語?」と言われる時代は終わりつつある
「インドで英語を学ぶ」と話すと、たいてい同じ反応が返ってきます。「インド訛りがうつるんじゃない?」「変な英語を覚えて帰ってくるんじゃないの?」
この質問をほぼ毎週いただきます。そのたびに思うのは、多くの方が持っているインドの英語のイメージが、20年前のコールセンターの印象で止まっているということです。
インド留学で伸びるのは、世界中のアクセントを聞き取る耳です
いまは、英語を母語としない人同士が英語で仕事をする時代です。世界の英語使用者のうちネイティブはおよそ4人に1人で、取引先も同僚も、インド・中東・アフリカ・アジア各国のアクセントで話します。相手の英語を聞き取れなければ、会話は始まりません。国際社会で本当に問われるのは、この聞き取る力です。
インドでは、母語の違うインド人同士の英語と、アフリカ・中東・アジア各国から来たクラスメイトの英語を、毎日浴びることになります。複数のアクセントに触れ続けると、初めて聞くアクセントの英語まで聞き取れるようになることが、音声知覚の研究で繰り返し確認されています。この耳はそのまま国際的な現場で役立ちます。
インド英語の訛りの実際
インド英語に訛りは「あります」
インド英語には音声的な特徴があり、代表的なものだけでも次のようなものが挙げられています。
- /t/ /d/ がそり舌音として実現されやすい
- /v/ と /w/ の区別が曖昧になり、wet と vet が近くなる
- th 音が歯の破裂音になる
- 非強勢音節の母音を弱めず、綴り字どおりに発音する
さらにリズムの型が違います。イギリス英語が「強勢タイミング型」なのに対し、教養層のインド英語は「音節タイミング型」であることが音声学の実証研究で示されています。日本語も音節(正確にはモーラ)タイミング型なので、実は日本人にとってリズムは取りやすい面もあるのですが、それでも英米の英語とは響きが違います。
理解度の実験データもあります。書き取り課題での正答率は、インド英語が79.6%、一般アメリカ英語が95.2%でした。数字だけ見れば、たしかにインド英語のほうが聞き取りにくい。
ただし、同じ研究にはこう書かれています
実験参加者の79%が「インド英語に馴染みがない」と回答していました。これが本質です。聞き取りにくさの相当部分は、アクセントの優劣ではなく慣れの問題です。そして「慣れ」は、現地で生活すれば手に入るものです。
インド英語は「間違った英語」ではありません
言語学では、インドは英語の「Outer Circle(外円)」に分類されます。旧英領で、英語が行政・司法・高等教育の言語として制度的に機能している国々のグループです。日本や中国、韓国が属する「Expanding Circle」とは、そもそも位置づけが違います。
そして2023年1月、オックスフォード英語辞典(OED)が800語超にインド英語の発音表記と音声を追加しました。これにより OED が収録する英語の変種は16になりました。インド英語は、辞書が正式に記録する英語の一つです。
規模も無視できません。2011年国勢調査に基づく集計では、英語を第一・第二・第三言語として使うインド人は約1億2,900万人(人口の約10.6%)で、米国に次ぐ世界第2位です。
「先生のレベル」はどうなのか
ここは慎重にお伝えしなければなりません。インドの公立学校の英語教員については、厳しい調査結果があります。ブリティッシュ・カウンシルの報告書は、マハラシュトラ州・マディヤプラデシュ州・ビハール州の調査で、望ましいとされる CEFR B2 レベルに達していた教員は10%未満だったと引用しています。
一方で、留学生が通うのは公立学校ではなく私立の語学学校です。私たちが提携している学校の講師陣は IELTS 対策を含む指導を英語で行っており、公立学校の調査結果がそのまま当てはまるわけではありません。
参考: TOEFL のスコアで見るインドと日本
インド人全体の英語運用力を示すデータとして、TOEFL iBT の国別平均があります(ETS 公式、2024年1〜12月)。
| 国 | Reading | Listening | Speaking | Writing | Total |
|---|---|---|---|---|---|
| インド | 24 | 25 | 22 | 23 | 94 |
| 日本 | 19 | 18 | 17 | 18 | 72 |
| フィリピン | 20 | 22 | 23 | 22 | 86 |
| 韓国 | 22 | 22 | 20 | 21 | 86 |
| 中国 | 23 | 21 | 20 | 21 | 85 |
| 世界平均 | 21.9 | 22.1 | 20.7 | 21.1 | 86 |
インドは総合94点で世界平均を8点上回り、Listening は25点(日本18点)です。ただし、この数字の読み方には注意が必要です。TOEFL 受験者は留学志望者という自己選択集団であり、国民全体の英語力を表すものではありません。「インド人の英語力は日本人より高い」という証明にはなりません。あくまで「留学を目指す層同士を比べると、この差がある」という話です。
最大のメリットは、リスニング力です
なぜインドで耳が鍛えられるのか。理由は2つあります。
理由1: インド人同士の英語ですら、発音がバラバラだから
インドは憲法第8付則に22の指定言語を持つ多言語国家です。2011年国勢調査では121の言語、話者1万人を超える母語だけで270が数えられています。
つまり、タミル語話者の英語、ヒンディー語話者の英語、カンナダ語話者の英語、ベンガル語話者の英語は、それぞれ音が違います。母語の音韻体系が違えば、英語の発音も変わるからです。そしてインド人同士も、共通語として英語で話します。
理由2: クラスメイトが世界中から来ているから
インド教育省の全国高等教育調査(AISHE 2023-24)によると、インドの高等教育機関で学ぶ外国人留学生は58,134人、出身国は173か国にのぼります。
| 順位 | 国 | シェア |
|---|---|---|
| 1 | ネパール | 24.1% |
| 2 | UAE | 7.0% |
| 3 | 米国 | 5.9% |
| 4 | バングラデシュ | 5.9% |
| 5 | ナイジェリア | 5.5% |
| 6 | ジンバブエ | 4.0% |
上位10か国で全体の63.8%です。南アジア、中東、アフリカ、そして欧米。アジアの留学先として、これだけ出身地が散らばっている国は多くありません。
そして重要なのが州別の数字です。外国人留学生をもっとも多く受け入れている州は、カルナータカ州(7,914人)で全国1位です。バンガロールはその中心都市です。正確を期すと、2位パンジャーブ州が7,902人でその差は12人なので、「圧倒的1位」ではなく「同率トップ級」というのが正しい表現です。またこれは高等教育機関の統計で、語学学校の留学生は含まれていません。
多様なアクセントに触れると、聞いたことのない訛りまで聞き取れるようになる
音声知覚の研究にAccent Variability Advantage(アクセント多様性の利点)と呼ばれる知見があります。Baese-Berk, Bradlow & Wright (2013) は、訓練群を2つに分けました。
A群: 5人の話者、全員が同じアクセント
B群: 5人の話者、それぞれ違うアクセント
そのうえで、訓練中に一度も聞かせていない新しいアクセント(スロバキア語訛りの英語)の理解度を測りました。結果、B群だけが、聞いたことのないアクセントの理解を向上させました。
同じアクセントをたくさん聞いても、そのアクセントが得意になるだけです。違うアクセントを浴びると、「訛りに対処する力そのもの」が育つ。これが実験で示されたということです。
関連する訓練手法(High Variability Phonetic Training)についても、2025年に79件の研究を統合したメタ分析が公表されています。事前事後比較で効果量 g = 0.92、統制群との比較で g = 0.67と、中〜大の効果が確認され、未学習の刺激への一定の転移も報告されています。
生活のすべてが「多様なアクセント訓練」になる
インドで生活するということは、この「多様なアクセント訓練」を、教室の中だけでなく生活のすべての場面で受け続けるということです。
「アメリカ帰りなのに、インド人の英語が聞き取れない」という現象
逆のパターンについても、大規模なデータがあります。TOEFL 受験者21,726名 を対象にした研究では、米国・豪州・英国の9名の話者による同一内容の講義を聴かせた結果、訛りの強さと馴染みの有無がリスニング理解に影響し、その影響はごく軽い訛りでも生じることが確認されました。
さらに直接的な研究もあります。米国の大学に在籍する中国・韓国・インド出身の学生386名に、米国英語・インド英語・中国語訛り英語の3条件で講義を聴かせたところ、中国・韓国の聞き手はインド人話者を聞いたときに、細部を問う設問で成績が低下しました。日本人学習者を対象にした同種の研究は見つけられませんでしたが、東アジアの英語学習者にとってインド英語が難所であることは、この研究が示しています。
日本の英語教育は「ネイティブの音」しか流していません
大学入試センターの研究開発部は、共通テストのリスニングについて、音声はネイティブ・スピーカーによる収録であると説明しています。そのうえで、将来の可能性として「深層学習に基づく合成音声をリスニングテストに適用できれば、北米英語だけに留まらず、イギリス英語やカナダ英語、さらにはインド英語など、さまざまなルーツを持つ人々それぞれの英語、いわゆるワールド・イングリッシュの会話問題を作成できる可能性も秘めています」と書いています。
つまり、インド英語のような英語に触れる機会は、日本の試験制度のなかではまだ「将来の可能性」の段階です。TOEIC のリスニングについても、査読誌のテストレビューは米・英・加・豪・NZ の話者が使われていると記述しており、いずれも英語を母語とする国です。
一方、現実の国際英語はこうです。英語を共通語として研究する分野では、世界の英語使用者のうち母語話者はおよそ4人に1人であり、英語でのやりとりの大多数に母語話者は関与していないと指摘されています。
教室で聞く英語と、社会で出会う英語の落差
日本の英語教育で聞かされる英語は、ほぼすべてネイティブの英語です。しかし社会に出て実際に対峙する英語の大半は、ネイティブではない人の英語です。この落差を埋める練習が、日本国内ではほとんどできません。インド留学は、その落差をまとめて埋める場所です。
数日の短い接触では、効果は出にくい
「インドに行けばリスニングが飛躍する」とは書けません。5日間・160名を対象に、1日39試行の短時間曝露を行った研究では、曝露群に統制群を上回る利得は見られませんでした。
数日の短い接触では、効果は出にくいということです。効果が期待できるのは、まとまった量と期間、そして多様な話者に浸ること。2週間の観光的な滞在ではなく、1か月以上、生活の中で英語を使う環境に身を置くことに意味があります。実際に半年間学んだ留学生の記録は牧田さんの体験談をご覧ください。
費用: 差が開くのは「3か月以上」から
短期だけを比べた場合、カナダやオーストラリアとの差はそれほど大きくありません。短期は渡航手配や初期費用の比重が高いため、どの国でも単価が上がるからです。差がはっきり出るのは3か月以上です。アメリカに1か月留学する予算があれば、インドでは3か月学べる計算になります(留学ジャーナル調べの欧米相場との比較)。インド側の費用の内訳は費用まとめで公開しています。
なぜ「インド」ではなく「バンガロール」なのか
理由は、アクセントの多様性というメリットを、インドの中で最も享受しやすい都市だからです。バンガロールは IT 産業の中心地としてインド全土から人が集まり、市民のうち州の公用語カンナダ語を母語とするのは42.1%にすぎません。残りの半数以上はタミル語・テルグ語・ヒンディー語・マラヤーラム語など母語の違うインド各地の出身者で、それぞれの英語を日常のなかで聞くことになります。
外国人留学生についても、カルナータカ州は全国で最も多い7,914人を受け入れており(AISHE 2023-24)、その中心都市がバンガロールです。インド人同士のアクセントの幅と、世界各国から来たクラスメイト。この両方が揃う環境は、インドの中でもバンガロールが最も整っています。
生活面では、標高約900m の高原都市で気候が穏やかなこと、英語がビジネスの主要言語であることも利点です。治安は、外務省の危険情報が主要都市と同じ「レベル1(十分注意してください)」で、詳しくは治安・安全ガイドにまとめています。街の詳細はバンガロールの記事、住まいは滞在環境をご覧ください。
インドで学ぶこと自体が、キャリアの材料になる
バンガロールはインドの IT・R&D 機能が最も集中する都市で、グローバル企業の開発拠点(GCC)人材の34%が集まり、カルナータカ州には日系企業の拠点が543あります。一方で、日本人の留学先の上位10か国にインドは入っていません(JASSO、2024年度)。「なぜインドを選んだのか」を自分の言葉で語れる人は、まだ圧倒的に少ないということです。現地就職まで見据えるならインド就職ガイドをご覧ください。
海外大学の「下見」としての価値
インドの大学・カレッジは規模も水準もばらつきが大きく、ウェブサイトだけでは判断できません。まず1〜3か月の語学留学で現地を自分の目で見てから進学を判断する順番なら、判断を誤ったときの損失を小さく抑えられます。判断材料はインドの大学進学は、決める前によく考えた方がいいにまとめています。
まとめ
インド英語にアクセントは、あります。ただし理解度の差の相当部分は「慣れ」の問題であり、実験参加者の79%は単にインド英語に馴染みがなかった、というのが研究の示すところです
インド英語は正式な英語の変種です。OED は2023年に800語超のインド英語発音を収録しました。英語話者数は約1億2,900万人で世界2位です
最大のメリットはリスニングです。複数のアクセントに触れた群だけが、初めて聞くアクセントまで理解できるようになる — これは実験で確認されている現象です
教室が国際的です。インドの外国人留学生は173か国から58,134人。受け入れ数トップの州がカルナータカ州で、その中心がバンガロールです
よくある質問
01インド英語の訛りが身についてしまいませんか?▼
インド英語に音声的な特徴があるのは事実です。ただ、留学中に接するのはインド人だけではありません。インドの高等教育機関には173か国から留学生が来ており、語学学校のクラスもアフリカ・中東・アジア各国出身者が中心です。特定の訛りに染まるより、複数の訛りに同時に触れることになります。そして音声知覚の研究では、複数のアクセントに触れた学習者だけが、聞いたことのない訛りまで理解できるようになると報告されています。
02インド英語は「正しい英語」なのですか?▼
言語学ではインドは英語の Outer Circle(外円)に分類され、英語が行政・司法・高等教育の言語として制度的に機能している国とされます。日本や中国が属する Expanding Circle とは位置づけが異なります。2023年1月にはオックスフォード英語辞典が800語超のインド英語発音を収録し、OED が記録する英語の変種は16になりました。英語話者数は約1億2,900万人で、米国に次ぐ世界2位です。
03先生の英語のレベルは大丈夫でしょうか?▼
インドの公立学校の英語教員については、CEFR B2 レベルに達していた教員が10%未満だったという調査があります(ブリティッシュ・カウンシル報告書)。ただし留学生が通うのは公立学校ではなく私立の語学学校です。一方でインドには公的な語学学校の認証制度が整っておらず、学校ごとの差が大きいのも事実です。だからこそ学校選びが渡航後の満足度をほぼ決めます。私たちが複数校を実際に訪問したうえで提携先を絞っているのは、この理由です。
04短期間の留学でもリスニングは伸びますか?▼
数日程度の短い接触では効果が出にくいという研究があります。5日間・160名を対象に1日39試行の短時間曝露を行った実験では、曝露群に統制群を上回る利得は見られませんでした。効果が期待できるのは、まとまった期間・多様な話者に浸ることです。観光的な滞在ではなく、1か月以上、生活の中で英語を使う環境に身を置くことに意味があります。
05結局、費用は欧米よりどれくらい安いのですか?▼
1か月だけで比べると、カナダやオーストラリアとの差はそれほど大きくありません。短期は渡航手配や初期費用の比重が高く、どの国でも単価が上がるためです。差がはっきり出るのは3か月以上で、アメリカに1か月留学する予算があればインドでは3か月学べる計算になります。
参考・出典
この記事の数値と主張の裏づけです。ご自身で確認できるよう、一次資料へのリンクを掲載しています。
英語の位置づけ・インド英語
- Oxford English Dictionary がインド英語発音を収録(2023年1月31日)
- Kachru, B. (1985) 同心円モデル(解説: Al-Mutairi 2019, English Language Teaching 13(1))
- Fuchs, R. (2016) Speech Rhythm in Varieties of English, Springer
- Verbeke, G. & Simon, E. (2023) “Listening to accents”, Lingua 292
- Borg, Padwad & Nath (2022) English language teaching, learning and assessment in India, British Council
- ETS「TOEFL iBT Test and Score Data Summary 2024」Table 16
- EF English Proficiency Index 2025
リスニング・アクセント研究
- Baese-Berk, Bradlow & Wright (2013) “Accent-independent adaptation to foreign accented speech”, JASA 133(3)
- Uchihara, Karas & Thomson (2025) “High variability phonetic training (HVPT): A meta-analysis”, SSLA 47(3)
- Bent, T. & Bradlow, A.R. (2003) “The interlanguage speech intelligibility benefit”, JASA 114(3)
- Ockey, G.J. & French, R. (2016) “From One to Multiple Accents on a Test of L2 Listening Comprehension”, Applied Linguistics 37(5)
- Shin, Lee & Lidster (2021) “Examining the effects of different English speech varieties”, Language Testing 38(4)
- McLaughlin, Baese-Berk & Van Engen (2024) “Exploring effects of brief daily exposure to unfamiliar accent”, Frontiers in Language Sciences 3
- Seidlhofer, B. (2005) “English as a lingua franca”, ELT Journal 59(4)
- 大学入試センター 研究開発部「リスニングテストと音声」
当社の代表は、エンジニアとして20代でインドに渡り、バンガロールで英語とITを学んだ元留学生です。現地のIT企業でインターンとして製品開発に参加し、インドとの関わりは10年を超えます。その留学では、日本のエージェント経由で相場からかけ離れた学費を払い、用意されていた住居は最初の2週間だけという経験もしました(代表プロフィール)。
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この記事の執筆・編集: インド留学プラス
