
インドで英語留学するメリット — 本当に伸びるのは「世界の英語を聞き取る力」
「インド訛りがうつるのでは」— 毎週いただく質問です。訛りの実際から最大のメリットであるリスニング力まで、学術研究と公的統計をもとに、裏付けが取れなかったことも含めて正直にお伝えします。
最終更新日: 2026-08-04
「インドで英語?」と言われる時代は終わりつつある
「インドで英語を学ぶ」と話すと、たいてい同じ反応が返ってきます。「インド訛りがうつるんじゃない?」「変な英語を覚えて帰ってくるんじゃないの?」
私たちはバンガロールで留学エージェントを運営しており、この質問をほぼ毎週いただきます。そのたびに思うのは、多くの方が持っているインドの英語のイメージが、20年前のコールセンターの印象で止まっているということです。
この記事では、インド留学のメリットを、できる限り公的統計と査読論文に基づいてお伝えします。同時に、私たちが調べても裏付けが取れなかったこと、数字を見るとむしろ不利なことも、そのまま書きます。留学は数十万円から数百万円と、人生の数か月を投じる判断です。都合のよい情報だけを並べても、渡航後に困るのは留学される方だからです。
こう書くのには理由があります。当社の代表自身が、エンジニアとして20代でインドに渡り、バンガロールで英語とITを学んだ元留学生だからです。現地のIT企業でインターンとして製品開発に参加し、インドとの関わりは10年を超えました。同時に、その留学では日本のエージェント経由で相場からかけ離れた学費を払い、用意されていた住居は最初の2週間だけという経験もしています(代表プロフィール)。良い面も悪い面も、自分が通った側として書いています。
先に結論を書きます
インドで英語を学ぶ最大のメリットは、「訛りのない英語を身につけること」ではありません。「世界中の訛りを聞き取れる耳をつくること」です。これは精神論ではなく、音声知覚の研究で繰り返し確認されている現象です。
訛りの話を、先に片づけます
インド英語に訛りは「あります」
これは否定しません。インド英語には音声的な特徴があり、代表的なものだけでも次のようなものが挙げられています。
- /t/ /d/ がそり舌音として実現されやすい
- /v/ と /w/ の区別が曖昧になり、wet と vet が近くなる
- th 音が歯の破裂音になる
- 非強勢音節の母音を弱めず、綴り字どおりに発音する
さらにリズムの型が違います。イギリス英語が「強勢タイミング型」なのに対し、教養層のインド英語は「音節タイミング型」であることが音声学の実証研究で示されています。日本語も音節(正確にはモーラ)タイミング型なので、実は日本人にとってリズムは取りやすい面もあるのですが、それでも英米の英語とは響きが違います。
理解度の実験データもあります。書き取り課題での正答率は、インド英語が79.6%、一般アメリカ英語が95.2%でした。数字だけ見れば、たしかにインド英語のほうが聞き取りにくい。
ただし、同じ研究にはこう書かれています
実験参加者の79%が「インド英語に馴染みがない」と回答していました。これが本質です。聞き取りにくさの相当部分は、アクセントの優劣ではなく慣れの問題です。そして「慣れ」は、現地で生活すれば手に入るものです。
インド英語は「間違った英語」ではありません
言語学では、インドは英語の「Outer Circle(外円)」に分類されます。旧英領で、英語が行政・司法・高等教育の言語として制度的に機能している国々のグループです。日本や中国、韓国が属する「Expanding Circle」とは、そもそも位置づけが違います。
そして2023年1月、オックスフォード英語辞典(OED)が800語超にインド英語の発音表記と音声を追加しました。これにより OED が収録する英語の変種は16になりました。インド英語は、辞書が正式に記録する英語の一つです。
規模も無視できません。2011年国勢調査に基づく集計では、英語を第一・第二・第三言語として使うインド人は約1億2,900万人(人口の約10.6%)で、米国に次ぐ世界第2位です。
「先生のレベル」については、正直に書きます
ここは慎重にお伝えしなければなりません。インドの公立学校の英語教員については、厳しい調査結果があります。ブリティッシュ・カウンシルの報告書は、マハラシュトラ州・マディヤプラデシュ州・ビハール州の調査で、望ましいとされる CEFR B2 レベルに達していた教員は10%未満だったと引用しています。
一方で、留学生が通うのは公立学校ではなく私立の語学学校です。私たちが提携している学校の講師陣は IELTS 対策を含む指導を英語で行っており、公立学校の調査結果がそのまま当てはまるわけではありません。
ただし「インドの語学学校ならどこでもよい」という意味ではありません
むしろ逆です。インドには公的な語学学校の認証制度が整っておらず、学校ごとの差が大きい。私たちが複数の学校を実際に見て回ったうえで提携先を絞っているのは、この差が渡航後の満足度をほぼ決めてしまうからです。「訛りのない英語を教えてくれる学校もある」という話も現地ではよく聞きますが、これを客観的に検証できる第三者データを私たちは持っていません。断定は避けます。
代わりに、私たちが開示できるのは提携校そのものです。Grace AcademyとHarvard English Academyの 2 校について、校名・所在地・コース構成・時間割を公開しています。コースは一般英語(Basic/Intermediate/Advanced の 3段階)、IELTS 対策、ビジネス英語、ヒンディー語。授業は1レッスン45〜60分、1日4〜5時間、月〜金の週5日です。学校名も住所も出さずに「質の高い提携校」とだけ書くより、実際に見て判断していただくほうが確かだと考えています(語学学校のページ/学校の選び方)。
参考: TOEFL のスコアで見るインドと日本
インド人全体の英語運用力を示すデータとして、TOEFL iBT の国別平均があります(ETS 公式、2024年1〜12月)。
| 国 | Reading | Listening | Speaking | Writing | Total |
|---|---|---|---|---|---|
| インド | 24 | 25 | 22 | 23 | 94 |
| 日本 | 19 | 18 | 17 | 18 | 72 |
| フィリピン | 20 | 22 | 23 | 22 | 86 |
| 韓国 | 22 | 22 | 20 | 21 | 86 |
| 中国 | 23 | 21 | 20 | 21 | 85 |
| 世界平均 | 21.9 | 22.1 | 20.7 | 21.1 | 86 |
インドは総合94点で世界平均を8点上回り、Listening は25点(日本18点)です。ただし、この数字の読み方には注意が必要です。TOEFL 受験者は留学志望者という自己選択集団であり、国民全体の英語力を表すものではありません。「インド人の英語力は日本人より高い」という証明にはなりません。あくまで「留学を目指す層同士を比べると、この差がある」という話です。
最大のメリットは、リスニング力です
ここがこの記事の中心です。なぜインドで耳が鍛えられるのか。理由は2つあります。
理由1: インド人同士の英語ですら、発音がバラバラだから
インドは憲法第8付則に22の指定言語を持つ多言語国家です。2011年国勢調査では121の言語、話者1万人を超える母語だけで270が数えられています。
つまり、タミル語話者の英語、ヒンディー語話者の英語、カンナダ語話者の英語、ベンガル語話者の英語は、それぞれ音が違います。母語の音韻体系が違えば、英語の発音も変わるからです。そしてインド人同士も、共通語として英語で話します。
理由2: クラスメイトが世界中から来ているから
インド教育省の全国高等教育調査(AISHE 2023-24)によると、インドの高等教育機関で学ぶ外国人留学生は58,134人、出身国は173か国にのぼります。
| 順位 | 国 | シェア |
|---|---|---|
| 1 | ネパール | 24.1% |
| 2 | UAE | 7.0% |
| 3 | 米国 | 5.9% |
| 4 | バングラデシュ | 5.9% |
| 5 | ナイジェリア | 5.5% |
| 6 | ジンバブエ | 4.0% |
上位10か国で全体の63.8%です。南アジア、中東、アフリカ、そして欧米。アジアの留学先として、これだけ出身地が散らばっている国は多くありません。
そして重要なのが州別の数字です。外国人留学生をもっとも多く受け入れている州は、カルナータカ州(7,914人)で全国1位です。バンガロールはその中心都市です。正確を期すと、2位パンジャーブ州が7,902人でその差は12人なので、「圧倒的1位」ではなく「同率トップ級」というのが正しい表現です。またこれは高等教育機関の統計で、語学学校の留学生は含まれていません。
多様なアクセントに触れると、聞いたことのない訛りまで聞き取れるようになる
ここからが学術的な裏付けです。音声知覚の研究にAccent Variability Advantage(アクセント多様性の利点)と呼ばれる知見があります。Baese-Berk, Bradlow & Wright (2013) は、訓練群を2つに分けました。
- A群: 5人の話者、全員が同じアクセント
- B群: 5人の話者、それぞれ違うアクセント
そのうえで、訓練中に一度も聞かせていない新しいアクセント(スロバキア語訛りの英語)の理解度を測りました。結果、B群だけが、聞いたことのないアクセントの理解を向上させました。
同じアクセントをたくさん聞いても、そのアクセントが得意になるだけです。違うアクセントを浴びると、「訛りに対処する力そのもの」が育つ。これが実験で示されたということです。
関連する訓練手法(High Variability Phonetic Training)についても、2025年に79件の研究を統合したメタ分析が公表されています。事前事後比較で効果量 g = 0.92、統制群との比較で g = 0.67と、中〜大の効果が確認され、未学習の刺激への一定の転移も報告されています。
つまり、こういうことです
インドで生活するということは、この「多様なアクセント訓練」を、教室の中だけでなく生活のすべての場面で受け続けるということです。
「アメリカ帰りなのに、インド人の英語が聞き取れない」という現象
逆のパターンについても、大規模なデータがあります。TOEFL 受験者21,726名 を対象にした研究では、米国・豪州・英国の9名の話者による同一内容の講義を聴かせた結果、訛りの強さと馴染みの有無がリスニング理解に影響し、その影響はごく軽い訛りでも生じることが確認されました。
さらに直接的な研究もあります。米国の大学に在籍する中国・韓国・インド出身の学生386名に、米国英語・インド英語・中国語訛り英語の3条件で講義を聴かせたところ、中国・韓国の聞き手はインド人話者を聞いたときに、細部を問う設問で成績が低下しました。日本人学習者を対象にした同種の研究は見つけられませんでしたが、東アジアの英語学習者にとってインド英語が難所であることは、この研究が示しています。
日本の英語教育は「ネイティブの音」しか流していません
大学入試センターの研究開発部は、共通テストのリスニングについて、音声はネイティブ・スピーカーによる収録であると説明しています。そのうえで、将来の可能性として「深層学習に基づく合成音声をリスニングテストに適用できれば、北米英語だけに留まらず、イギリス英語やカナダ英語、さらにはインド英語など、さまざまなルーツを持つ人々それぞれの英語、いわゆるワールド・イングリッシュの会話問題を作成できる可能性も秘めています」と書いています。
つまり、インド英語のような英語に触れる機会は、日本の試験制度のなかではまだ「将来の可能性」の段階です。TOEIC のリスニングについても、査読誌のテストレビューは米・英・加・豪・NZ の話者が使われていると記述しており、いずれも英語を母語とする国です。
一方、現実の国際英語はこうです。英語を共通語として研究する分野では、世界の英語使用者のうち母語話者はおよそ4人に1人であり、英語でのやりとりの大多数に母語話者は関与していないと指摘されています。
まとめると、こうなります
日本の英語教育で聞かされる英語は、ほぼすべてネイティブの英語です。しかし社会に出て実際に対峙する英語の大半は、ネイティブではない人の英語です。この落差を埋める練習が、日本国内ではほとんどできません。インド留学は、その落差をまとめて埋める場所です。
誇張しないために、限界も書きます
「インドに行けばリスニングが飛躍する」とは書けません。5日間・160名を対象に、1日39試行の短時間曝露を行った研究では、曝露群に統制群を上回る利得は見られませんでした。
数日の短い接触では、効果は出にくいということです。効果が期待できるのは、まとまった量と期間、そして多様な話者に浸ること。2週間の観光的な滞在ではなく、1か月以上、生活の中で英語を使う環境に身を置くことに意味があります。実際に半年間学んだ留学生の記録は牧田さんの体験談をご覧ください。
私たちが実際に受け入れてきた留学生
ここまで公的統計と査読論文を並べてきましたが、それだけでは「では実際に日本人が行くとどうなるのか」は分かりません。ここからは私たちが現地で受け入れ、本人に直接うかがった記録です。外部データではないぶん、数は少なく、一般化もできません。それでも、実際に起きたことです。
6ヶ月・英語力ゼロに近い状態から
渡航前は「中学生レベル」、半年後に IELTS へ
最初の1ヶ月で「間違ってもいいから話す」に切り替えたことでスピーキングが伸び、2〜3ヶ月目には日常会話が成立するように。4ヶ月目には伸び悩んで3日間まったく勉強しなかった時期もありました。1日4時間の授業に加えて、住まいでの友人との会話が毎日およそ2時間。この授業外の時間が結果を左右しています。
6ヶ月・英語留学から現地就職へ
10社以上に応募し、約2ヶ月で内定
6ヶ月の英語留学を終えたあと現地で就職活動へ。応募は10社以上、書類選考の通過は7社、面接はすべてオンラインで、活動開始から内定まで約2ヶ月でした。面接の言語は日本語のみ・英語のみ・両方が混ざるものの3パターン。留学で身につけた英語がそのまま試される場面です。
高校2年生(17歳)・1ヶ月・単身
2つの学校に通い、ジムのトレーナーとも英語で話した
保護者の同伴なしで渡航した17歳の記録です。滞在中に2つの語学学校へ通い、「学校によって雰囲気がまったく違う」ことを実感。英語とヒンディー語の授業に加えて参加したパーソナルトレーニングでは、指導がすべて英語のため、体を動かす時間がそのまま英会話の時間になっていました。
インタビュー・インドで働く日本人4名
保健師から人材紹介へ、栄養士から飲食店へ
留学のその先として、インドで実際に働いている日本人4名にも話を聞いています。未経験の分野へ転身した方、営業から外資系のブリッジSEになった方など、経歴はさまざまです。現地で英語を使って働くことが、特別な人だけの話ではないと分かります。
受け入れの規模についても書いておきます。当社は2025年のインド留学で「受入数ランキング1位」という実績を得ています(自社調査によるものです。第三者機関の認定ではない点は正直に申し添えます)。ほかにも、タイから来た14歳の中学生が半年間の英語集中プログラムに参加した実績があります。10代の受け入れについては高校生・中学生のインド留学にまとめました。
ここは正直に線を引きます
上に挙げたのは個人の記録であって、平均でも保証でもありません。半年で全員が IELTS に挑めるわけでも、2か月で内定が出るわけでもありません。同じ環境でも、伸びる人と伸びない人がいます。この記事の前半で紹介した研究が示しているのは「多様な訛りに浸れば訛りへの対処力が育つ」という一般的な傾向であって、個々の成果を約束するものではないからです。
費用: 差が開くのは「3か月以上」から
安さだけを売りにするつもりはありませんが、費用は現実的な判断材料なので数字を並べます。まず欧米の語学留学の相場です(留学ジャーナル調べ、2026年1月時点。授業料+滞在費+食費で、航空券・保険・お小遣いは別途)。
| 国 | 4週間 | 3か月 | 1年 |
|---|---|---|---|
| アメリカ | 56万〜65万円 | 144万〜217万円 | 528万〜838万円 |
| イギリス | 41万〜64万円 | 113万〜188万円 | 413万〜712万円 |
| オーストラリア | 37万〜43万円 | 112万〜135万円 | 411万〜530万円 |
| カナダ | 35万〜47万円 | 98万〜125万円 | 355万〜494万円 |
正直に言うと、短期だけを比べた場合、カナダやオーストラリアとの差はそれほど大きくありません。短期は渡航手配や初期費用の比重が高いため、どの国でも単価が上がるからです。差がはっきり出るのは3か月以上です。アメリカに1か月留学する予算があれば、インドでは3か月学べる計算になります。インド側の費用の内訳は費用まとめで公開しています。
生活費そのものが違います
生活費指数(Numbeo)では、バンガロールを基準にした場合、東京は家賃込みで171.8%高く、ロンドンは399.0%高い(約5倍)、シドニーは350.0%高いという数字が出ています。Numbeo はユーザー投稿型で公的統計ではありませんが、桁の感覚をつかむ参考にはなります。マーサーの生活費調査2024年版でも、ベンガルールは226都市中195位で、インドの都市は世界トップ100に1つも入っていません。
見落とされがちな「入口の壁」
欧米留学でもう一つ効いてくるのが、学生ビザの資金証明です。近年、各国が大幅に引き上げています。
| 国 | 生活費の証明額(学費とは別) |
|---|---|
| イギリス | ロンドン内 月 £1,529 × 最大9か月 = £13,761 |
| オーストラリア | 年 AUD 29,710(2024年5月10日〜。5年で約41%増) |
| カナダ | 年 CAD 22,895(2025年9月1日〜。前期間の2倍以上) |
円換算では、いずれも数百万円規模の資金を口座に用意しておく必要があるということです。なお、イギリスについては日本国籍の方は資金証明書類の提出が原則不要です。要件自体は満たす必要がありますが、「日本人も £13,761 を用意しないと申請できない」というのは誤りなので、念のため補足します。インド留学のビザについてはビザ完全ガイドをご覧ください。
インドで学ぶこと自体が、キャリアの材料になる
「これから伸びる国」ではなく「いま動いている国」
インドの経済規模について、正確に書きます。IMF の World Economic Outlook によると、名目 GDP は2026年時点でインドが4兆1,530億ドル、日本が4兆3,790億ドル、イギリスが4兆2,650億ドル。インドは米・中・独・日・英に次ぐ世界第6位です。
「インドが日本を抜いて世界4位になった」という報道を目にした方も多いと思いますが、2026年8月時点ではまだ実現していません。2025年5月にインド政府系機関が IMF の見通しをもとに発表した内容が広く報じられましたが、その後のルピー安と、2026年2月のインド統計省による GDP 基準年改定で水準が下方修正されました。IMF の見通しでは、インドが日本とイギリスの両方を上回るのは2027年です。「すでに4位」ではなく「来年にも4位」。これが正確なところです。
バンガロールという都市の位置づけ
バンガロールは、インドの IT・R&D 機能が最も集中する都市です。グローバル企業がインドに置く開発・オペレーション拠点を GCC(Global Capability Center)と呼びますが、Zinnov/NASSCOM の調査(2026年)によると、インド全体で GCC 企業2,117社・拠点3,728・就業者236万人。ベンガルール単独で拠点1,080以上、就業者 約80万4,000人。インド全体の GCC 人材の34%が集まっています。Forbes Global 2000企業のうち506社がインドに GCC を持っています。
日系企業も同様です。在インド日本国大使館とジェトロの共同調査(2024年10月1日時点)では、インド進出日系企業は1,434社・5,205拠点。うちカルナータカ州に543拠点があります。ジェトロの「2025年度 海外進出日系企業実態調査」では、インド進出日系企業の81.5%が今後1〜2年で事業を「拡大」すると回答し、アジア・オセアニア20か国・地域で最も高い数字でした。5年連続の上昇です。正確を期すと、進出企業数はここ数年ほぼ横ばいで、増えているのは拠点数です。
日本とインドの間で、人が動く枠組みができています
2025年8月の日印首脳会談(東京)で、両国は今後5年間で50万人以上の人材交流を目指すロードマップを採択しました。対印民間投資目標も、今後10年で10兆円に設定されています。ただし、このプランの主眼はインド人材の日本への受け入れであり、日本人のインド留学を支援する施策ではありません。「日本政府がインド留学を後押ししている」と書くのは飛躍なので、そう書きません。事実として言えるのは、日印間の人の往来が国家目標として設定されているということです。
「日本人でインドに留学した人」は、まだ希少です
JASSO の「2024年度 日本人学生留学状況調査」によると、その年に海外留学を開始した日本人学生は91,054人。留学先の上位は米国12,627、豪州9,329、韓国8,360、カナダ6,736、英国5,381と続きます。インドは上位10か国に入っておらず、個別の人数は公表されていません(「その他」28,196人に含まれます)。
これは弱みではなく、そのまま強みです。アメリカ留学経験者は毎年1万人以上生まれますが、インド留学経験者はほとんどいません。就職活動でも、社内でも、「なぜインドを選んだのか」を自分の言葉で語れる人は、圧倒的に少ないということです。英語の先に現地就職まで見据えるならインド就職ガイドもあわせてご覧ください。
「帰国後も続く関係」について、正直に書きます
インド留学の魅力として、「インド人の友人は、留学後も連絡をくれる」という話をよく聞きます。私たち自身、現地でそう感じる場面が何度もあります。ただし、これを裏づける統計や研究を、私たちは見つけられませんでした。
むしろ、留学生の友人関係を扱った研究には慎重な結論もあります。メルボルンとシンガポールの留学生120名を対象にした調査では、留学中に築かれた友人関係は「文脈的かつ一時的」であり、SNS は新しい友人を作るためではなく母国の旧友との再接続に使われていた、と報告されています。
ですので、「インド人の友人なら関係が続きます」とは書きません。書けるのは、関係を続けやすい条件が揃っているということです。
- 世界最大のディアスポラ— インド出身の国際移民は1,850万人で世界1位(国連 DESA)。インドで出会った友人が、数年後にどこかの国にいる確率が高いということです
- 米国への留学生送出1位— 2024/25年度、米国の留学生363,019人がインド出身で中国を上回り1位(IIE Open Doors 2025)
- 連絡インフラが揃っている— インドは WhatsApp の世界最大市場で利用者5億人超。帰国後の連絡手段は WhatsApp になります
- 年齢層が近い— 年齢中央値はインド28.4歳、日本49.4歳。同世代・年下の友人が圧倒的に多い環境です
「続く」ではなく「続けやすい」。ここは正直に線を引かせてください。
海外大学の「下見」としての価値
インドの大学進学や、交換留学、単位取得を伴う短期留学を検討されている方にとって、語学留学期間は現地を自分の目で確かめる期間になります。これは軽い話ではありません。インドの大学・カレッジは規模も水準もばらつきが極めて大きく、ウェブサイトの写真だけでは判断できないからです。
バンガロールには、実際に見に行ける対象が揃っています。
- IISc(インド理科大学院)— QS 世界大学ランキング2027で世界221位。国際関係オフィスを持ち、短期の訪問プログラムの枠組みもあります
- IIM バンガロール校— 交換留学のファクトシートを公開しており、授業料なし、学生寮 約 INR 20,000/学期といった条件まで明示されています(対象は MBA 相当課程の2年次生)
- Christ University— 留学生520名以上・38か国以上、MOU 125件以上。1〜2セメスターの交換留学、単位互換、サマー/ウィンタープログラムなど、外国人向けの制度が最も明確に整っています
インド全体では、QS 世界大学ランキング2027に52機関が掲載されています(IIT 13校を含む)。ちなみに前年の2026年版は54機関で、増加ではなく微減です。この点も正確に書いておきます。
4年間まるごと賭ける必要はありません
JASSO の調査では、2024年度に海外留学を開始した91,054人のうち33,792人は協定等に基づかない留学です。3分の1以上が、自分で留学先を見つけて渡航しています。まず1〜3か月の語学留学で現地を見て、それから進学や交換留学を判断する。この順番であれば、判断を誤ったときの損失を小さく抑えられます。大学進学そのものの判断材料はインドの大学進学は、決める前によく考えた方がいいに正直にまとめました。
なぜ「インド」ではなく「バンガロール」なのか
気候: エアコンなしで暮らせる高原都市
バンガロールは標高約900m のデカン高原上にあります。緯度は低いのですが、標高のおかげで気候がかなり緩和されています。平年値では、もっとも暑い4月が平均最高34.0℃/平均最低22.0℃、もっとも涼しい12月が平均最高26.5℃/平均最低16.2℃。年間降水量は約985mm、雨季は6〜10月です。
「一年中過ごしやすい」と紹介されることが多い都市ですが、3〜5月は日中35℃前後まで上がります。冬でも15℃を下回ることはほとんどない、というのが正確な表現です。チェンナイやムンバイのような平地の都市に比べれば、はるかに過ごしやすい気候です。
治安: 都合の悪い数字も出します
ここは、多くの留学サイトが甘く書きがちな部分です。私たちは数字をそのまま出します。日本の外務省の危険情報では、カルナータカ州・ベンガルールは4段階のうちもっとも低い「レベル1(十分注意してください)」です。デリー、ムンバイ、チェンナイなど主要都市も同じレベル1です。「危険情報が出ていない安全な地域」ではありません。レベル1は出ています。
インド国家犯罪記録局(NCRB)の統計では、主要19都市の全認知犯罪率(人口10万人あたり、2023年)は次のとおりです。
| 都市 | 犯罪率 |
|---|---|
| コーチ | 3,192.4 |
| デリー | 2,105.3 |
| 19都市平均 | 828 |
| ベンガルール | 806.2 |
| チェンナイ | 419.8 |
| ムンバイ | 355.4 |
| ハイデラバード | 332.3 |
| コルカタ | 83.9 |
正直に言うと、この統計では「ベンガルールはインドで最も治安が良い」とは言えません。19都市平均とほぼ同水準で、ムンバイやチェンナイ、ハイデラバードよりは高い数字です。言えるのは、デリーと比べれば大幅に低いということです。デリーの2,105.3は19都市平均の2.5倍で、「インドは危ない」というイメージの相当部分は、デリーの数字によって形成されています。
なお、NCRB の数字にはいくつか読み方の注意があります。1件の事件に複数の罪が含まれる場合は最も重い罪のみを計上する運用であること、通報率・ FIR 登録率が地域によって異なるため「犯罪率が高い=危険」ではなく「登録が多い」可能性があること、そして人口10万人あたりの率の分母が2011年国勢調査人口であることです。ベンガルールは2011年の約850万人から現在1,280万人規模に成長しているため、率は実態より高く出ている可能性があります。またベンガルールは、サイバー犯罪の認知件数が大都市中最多です。オンライン詐欺への警戒は、日本にいるとき以上に必要です。
治安データの読み方について
治安・安全ガイドでは、体感治安を測る Numbeo の犯罪指数(欧米主要都市との国際比較)を扱っています。こちらの NCRB は警察が認知した件数の公式統計で、測っているものが異なります。国際比較では欧米より安全側に出る一方、インド国内の都市間比較では平均並み — どちらも事実です。両方をご覧いただくのが、いちばん正確な理解につながります。
住まいこそが、実際のリスクです
治安を語るとき、統計より現実的に効いてくるのは住環境です。Deccan Herald が2025年8月、入居希望者を装ってベンガルール市内の PG(Paying Guest:下宿型の共同住居)10軒に問い合わせたところ、5軒が政府発行の身分証の提示を求めませんでした。市当局のガイドラインが存在するにもかかわらず、です。
女性専用 PG が多いから安全、という単純な話ではありません。誰が入居しているのか確認していない物件が半数ある、というのがベンガルールの現実です。私たちが留学プランで、市場で安く借りられる PG ではなく管理されたレジデンスをご案内しているのは、この理由です。度を超えた激安プランで浮く数万円と、住環境のリスクは、まったく釣り合いません(格安留学のリスク/滞在環境)。
女性の留学環境について
「インドに女性が留学するなんて」と言われることがあります。事実として書けることを挙げます。
- 日本人の海外留学生の61.2%は女性です(JASSO、2024年度)。留学はもともと女性が多数派です
- カルナータカ州は2023年6月から Shakti 制度により、州営バスで女性の乗車が無料です
- ベンガルールは内務省の Nirbhaya Fund による Safe City 事業の対象8都市の一つで、市内3,000か所以上に7,000台超の CCTV などが整備されています
- Namma Metro(市内地下鉄)は2025年8月に3路線・96.1km となり、1日の利用者が初めて100万人を超えました。Uber、Ola といった配車アプリも普及しています
なお、よく誤って紹介されますが、Namma Metro に女性専用車両はありません(女性専用車両があるのはデリーメトロです)。私たちが受け入れている留学生にも女性は多く、実際に安心して過ごされています。ただし「日本人の女子大生が多い」ことを示す公的統計は存在しないため、断定的な数字は書きません。
英語が通じる街かどうか
カルナータカ州の公用語はカンナダ語で、市民の42.1%が母語としています。ただしベンガルールでは、英語がホワイトカラー層に広く使われ、ビジネスの主要言語になっています。EF English Proficiency Index 2025のインド都市別スコアでは、コーチ577、ムンバイ570に続きベンガルールが569。デリーの407を大きく上回ります(EF EPI は自社の無料オンラインテスト受験者に基づく自己選択サンプルなので、都市間の相対的な傾向を見る参考として扱ってください)。
IELTS を現地で受けられます
留学中に IELTS を受験したい方向けの実務情報です。インドでの IELTS 実施は IDP が一手に担っています。2021年7月25日以降、ブリティッシュ・カウンシルはインドで IELTS を実施していません(古い情報が多く残っているのでご注意ください)。バンガロールの IDP 試験会場は St. Mark's Road/Whitefield/Kasturba Road の3か所。受験料は INR 19,000(ペーパー版。改定されることがあるため申込時にご確認ください)。コンピューター版は1日最大3回、週7日実施されています。提携校の中には IELTS 対策コースを設けている学校もあります。
それでも、インド留学が向かない方もいます
私たちはエージェントですが、合わない方に勧めるつもりはありません。
向かない可能性が高い方
- ネイティブの発音を身につけること自体が目的の方。それが目的なら、素直に英語圏へ行くほうが合理的です
- 予定どおりに物事が進まないと強いストレスを感じる方。インドでは授業や予定の変更が日常的に起こります
- 食事のバリエーションを重視する方。バンガロールは選択肢が多い都市ですが、日本と同じにはなりません
- 「安いから」だけが動機の方。3か月未満だと欧米との差はそれほど大きくありません
向いている方
- 国際的な現場で、あらゆる訛りの英語と渡り合える耳をつくりたい方
- 同じ予算で長く学びたい方
- インド市場・インドの IT 産業に関心があり、現地を自分の目で見ておきたい方
- インドの大学進学や交換留学の下見をしたい方
- 「みんなと同じ留学先」ではない経験を求めている方
まとめ
- 訛りは、あります。ただし理解度の差の相当部分は「慣れ」の問題であり、実験参加者の79%は単にインド英語に馴染みがなかった、というのが研究の示すところです
- インド英語は正式な英語の変種です。OED は2023年に800語超のインド英語発音を収録しました。英語話者数は約1億2,900万人で世界2位です
- 最大のメリットはリスニングです。複数のアクセントに触れた群だけが、聞いたことのない訛りまで理解できるようになる — これは実験で確認されている現象です
- 教室が国際的です。インドの外国人留学生は173か国から58,134人。受け入れ数トップの州がカルナータカ州で、その中心がバンガロールです
- 費用の差は3か月以上で開きます。アメリカ1か月分の予算で、インドなら3か月学べます
- キャリアの材料になります。インドは2027年にも世界4位の経済規模になる見通しで、ベンガルールにはインドの GCC 人材の34%が集中しています。日本人留学生の上位10か国にインドは入っておらず、経験として希少です
- 治安は、美化しません。外務省の危険情報はレベル1が出ています。NCRB の統計ではデリーより大幅に低いものの、19都市平均並みです。そして最大のリスクは住まいの選び方です
まずは、向いているかどうかからご相談ください
よくある質問
01インド英語の訛りが身についてしまいませんか?▼
インド英語に音声的な特徴があるのは事実です。ただ、留学中に接するのはインド人だけではありません。インドの高等教育機関には173か国から留学生が来ており、語学学校のクラスもアフリカ・中東・アジア各国出身者が中心です。特定の訛りに染まるより、複数の訛りに同時に触れることになります。そして音声知覚の研究では、複数のアクセントに触れた学習者だけが、聞いたことのない訛りまで理解できるようになると報告されています。
02インド英語は「正しい英語」なのですか?▼
言語学ではインドは英語の Outer Circle(外円)に分類され、英語が行政・司法・高等教育の言語として制度的に機能している国とされます。日本や中国が属する Expanding Circle とは位置づけが異なります。2023年1月にはオックスフォード英語辞典が800語超のインド英語発音を収録し、OED が記録する英語の変種は16になりました。英語話者数は約1億2,900万人で、米国に次ぐ世界2位です。
03先生の英語のレベルは大丈夫でしょうか?▼
インドの公立学校の英語教員については、CEFR B2 レベルに達していた教員が10%未満だったという調査があります(ブリティッシュ・カウンシル報告書)。ただし留学生が通うのは公立学校ではなく私立の語学学校です。一方でインドには公的な語学学校の認証制度が整っておらず、学校ごとの差が大きいのも事実です。だからこそ学校選びが渡航後の満足度をほぼ決めます。私たちが複数校を実際に訪問したうえで提携先を絞っているのは、この理由です。
04短期間の留学でもリスニングは伸びますか?▼
数日程度の短い接触では効果が出にくいという研究があります。5日間・160名を対象に1日39試行の短時間曝露を行った実験では、曝露群に統制群を上回る利得は見られませんでした。効果が期待できるのは、まとまった期間・多様な話者に浸ることです。観光的な滞在ではなく、1か月以上、生活の中で英語を使う環境に身を置くことに意味があります。
05結局、費用は欧米よりどれくらい安いのですか?▼
1か月だけで比べると、カナダやオーストラリアとの差はそれほど大きくありません。短期は渡航手配や初期費用の比重が高く、どの国でも単価が上がるためです。差がはっきり出るのは3か月以上で、アメリカに1か月留学する予算があればインドでは3か月学べる計算になります。加えて欧米は学生ビザの資金証明として数百万円規模を口座に用意する必要があり、この入口の壁も見落とせません。
参考・出典
この記事の数値と主張の裏づけです。ご自身で確認できるよう、一次資料へのリンクを掲載しています。
英語の位置づけ・インド英語
- Oxford English Dictionary がインド英語発音を収録(2023年1月31日)
- Kachru, B. (1985) 同心円モデル(解説: Al-Mutairi 2019, English Language Teaching 13(1))
- Fuchs, R. (2016) Speech Rhythm in Varieties of English, Springer
- Verbeke, G. & Simon, E. (2023) “Listening to accents”, Lingua 292
- Borg, Padwad & Nath (2022) English language teaching, learning and assessment in India, British Council
- ETS「TOEFL iBT Test and Score Data Summary 2024」Table 16
- EF English Proficiency Index 2025
リスニング・アクセント研究
- Baese-Berk, Bradlow & Wright (2013) “Accent-independent adaptation to foreign accented speech”, JASA 133(3)
- Uchihara, Karas & Thomson (2025) “High variability phonetic training (HVPT): A meta-analysis”, SSLA 47(3)
- Bent, T. & Bradlow, A.R. (2003) “The interlanguage speech intelligibility benefit”, JASA 114(3)
- Ockey, G.J. & French, R. (2016) “From One to Multiple Accents on a Test of L2 Listening Comprehension”, Applied Linguistics 37(5)
- Shin, Lee & Lidster (2021) “Examining the effects of different English speech varieties”, Language Testing 38(4)
- McLaughlin, Baese-Berk & Van Engen (2024) “Exploring effects of brief daily exposure to unfamiliar accent”, Frontiers in Language Sciences 3
- Seidlhofer, B. (2005) “English as a lingua franca”, ELT Journal 59(4)
- 大学入試センター 研究開発部「リスニングテストと音声」
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